蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
松浦とは同期なだけで、付き合ってるわけじゃない。
以前、告白された事はあるけど、断わったから。
だったら、付き合ってないですって事実を言えばよかっただけの話なのに。
言えなかったのは、胸の中にある期待に気付いてしまったから。
―――課長が私と松浦の事を聞いてきたのは、私に何かしらの感情があるからなのかもしれない。
そんな浅ましい期待をする自分を誤魔化したくて、素直に答える事ができなかった。
『付き合ってないです』
そう答えたら、きっと。
その後の課長の行動に、必要以上に一挙一動する自分が分かってたから。
過度な期待をして、振り回されるのが分かってたから。
だけど、付き合ってるなんて嘘をつく事もできなくて。
そう答えて、課長が声をかけてくれなくなるのが嫌で。
矛盾だらけの気持ちが大きく揺れて私を困惑させる。
一度止まった後また震えだしたケータイ。
ポケットから取り出して画面を見ると、“松浦”の名前があった。