蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


満員電車は嫌いだし、苦手だ。
それなのに、先生に頼まれた仕事のせいで、私が帰る時間帯はいつも満員。

だから、本当だったら満員電車に乗らざるをえない状況を作った元凶の図書館整理に対して、愚痴や文句しか浮かばないハズなのに……。

藤堂先輩が手伝い始めてからは違う。
押し込まれて顔が変形するほどの乗車率でも、気分が軽い。

先輩との会話とか、先輩の笑顔を思い返してると、いつの間にか降りる駅に着いていて……。
大げさじゃなく、満員電車が気にならなくなるほど、翌日の図書館での作業が私の気持ちを軽くして明るく照らしてくれてた。

でも……。
作業が終了に近づいてきている今、それは少し違ってきていて。
嬉しいって感情だけだった気持ちに、寂しさが混じり始めている。

そして私が感じてる寂しさは、藤堂先輩よりもずっとずっと大きいモノだと思う。

だけどそれを素直に言う事は、自分の気持ちを気付かせる気がして嘘をついた。
そんな私を見て、藤堂先輩はまた苦笑いする。


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