蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「吉野、困ると泣きそうな顔するから。
どうしていいか分からないって顔してるように見えて、思わず声かけたんだ」
「あ……」
確かにあの時、松浦への返事に困ってた。
『吉野が男遠ざけてるのって、男が苦手だからってだけ?
それとも、忘れられないって言ってた男が原因?』
その問いに、なんて答えればいいのか分からなくて。
それがバレてたなんて。
そんな事まで覚えていてくれたなんて……。
「ありがとうございます」
素直な気持ちを口にすると、課長は「いや」と微笑む。
「俺が勝手にした事だし」
そう言った課長が、壁から背中を離す。
そして、じっと私を見た。
ドキって大きく跳ねた胸が、何かを期待して身体を強張らせる。
だって、前、違う会議室でふたりきりになった時、キスされたから。
ドキドキドキドキ、速い鼓動が、勝手な期待を身体中に巡らせた。