蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


……けど。

「じゃあ、俺戻ってるから。
片付け頼むな」
「え、あ……はいっ」

期待していた自分に気付かれたくなくて、変に強くなった語尾。

慌てて机の上を拭きだした私に、課長は不思議そうにした後クスって笑って、「じゃあ頼むな」とドアの方に歩き出す。

全神経を背中に集中させて、課長の気配がなくなったのを確認してから、その場にしゃがみ込んだ。

……私、何を期待してたんだろう。

そう考えて深いため息をつく。

忘れるって、決めたのに。
もうツライ思いしたくないから、想ってるだけの恋でいいって思ってるのに。

そんな思いとは裏腹に課長にいやらしい期待を寄せている自分に気付いて、膝におでこをくっつける。

……最低。
こんな、恥ずかしい期待しちゃうなんて……どうかしてる。

本当だったら、このまま家に逃げ帰りたい気分だったけどそういうわけにはもちろんいかず、片付け途中の部屋を思い出して、ゆっくりと立ち上がった。


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