蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


「あ、吉野さん!」

膝が伸びたのとほぼ同時くらいに大きな声で呼ばれて、身体がビクっとすくむ。
ドアに視線を移すと、同じ課の先輩の姿があった。

「な、なんですか?」

一つに結んだ長い髪を揺らしながらツカツカとすごい勢いで近寄ってくる先輩に一歩後ずさりながら聞くと、目の前まで来た先輩がニコっと笑う。

「課長と何話してたの?」
「え……」
「今、いたでしょ? 課長。
なんか仲良さそうに見えたんだけど、もしかして知り合いとか?」
「あ……えっと、知り合いってほどでもないんですけど、大学が一緒で何度か話した事があって……それで」

変な疑いをかけられないように、そう説明する。
何かつっこまれないか不安になりながら見ていると、先輩は「へー、そうなんだ」と納得した笑顔を見せた。

「吉野さんが後輩だって、課長も知ってるんだよね?」
「はい。あ、でも、本当に何度か話した程度で、親しいとかじゃ全然……」



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