蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


私を見た課長はにこっと笑ってからドアに手をつく。
両手の間に私を閉じ込めるようにして。

「話の途中で退席するのはあまり褒められないな」
「……なに、考えてるんですか。どいてください」
「じゃあ、二人きりの時は他人行儀やめる?」

じっと見つめながら聞いてくる課長を見ていられなくて、目を逸らす。

「……やめません。
だって……もう、他人じゃないですか」

言ってからゆっくりと顔を上げると、何も言えずに黙ってる課長と目が合う。

いつもふざけてるような態度の課長が黙り込むのは、傷ついてる時。
それを知っていたから、ぐっと歯を噛み締めた。

なんでそんな顔するの?
なんで私に構うの?

なんで……また会っちゃったの?



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