蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「でもね、N銀行の男性社員と合コンがあるってさっきメールがきて、泣く泣く課長のお見舞いを諦めたわけ。
だって、可能性からいくと、課長とどうにかなる方が難しそうだし……。本当に苦渋の決断なんだけど」
「……えっと、それでなんで私なんでしょうか」
「他の女子社員と違って、吉野なら課長と何かあるなんて事ないだろうから」
「……はぁ」
「その封筒に、2500円と課長の家の住所が入ってるから。
お釣り出たら吉野がとっておいていいわ。
絶対に“女子社員一同からです”って渡すのよ。いい?」
「……はぁ」
あまりの激しさと勝手さに生返事してから、ハっとする。
お見舞いなんて無理に決まってる。
課長の部屋を訪ねるなんて、そんな事……っ。
「せ……、んぱぃ」
けど、呼び止めようとした先輩の姿は既になくて。
咄嗟に誰か頼める人がいないか探したけど……。
女子社員は、先輩が言ってた合コンにでも行ったのかもういないし、男性社員で頼める人なんて松浦くらいしかいない。
でもその頼みの松浦は、こんな時に限って休みだし。
小銭の嵩む封筒を握りしめながら、ガックリと肩を落とした。