蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—

知美の住むアパートも私の住むアパートも二駅先にあるけど、課長の部屋はここから歩いて行ける距離にある。

もちろん、大学の時住んでいた場所とは違う。
それは当たり前の事だけど、封筒の中に入っていた住所で知って、少しだけ寂しくなった。

人通りが多い道を歩きながらぼんやりしていると、知美が思い出したように「そういえば」と切り出した。

「さっき、松浦のと一緒に課長のお見舞いも買ってたけど、課長も風邪なの?」
「えっ、あ、えっと、それは分からないんだけど……。
先輩に聞いても、休みって事だけで理由は分からないって言うし……」
「そう……。心配ね」
「うん……」

本当に心配していますっていう顔をした知美につられて、思わず本音が出る。
お見舞いに行くのは気まずいけど、正直に白状すれば心配だ。

課長が無理するタイプだって事は知ってるから。

頷いてしばらくしてからハっとして……恐る恐る隣を見ると、にっこりと笑顔を向ける知美と目が合った。





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