蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「もう、惑わせないでください……」
課長の傷ついてる顔なんか見たくなくて、目を伏せながら言う。
課長は、昔が懐かしくて私に構ってるだけかもしれない。
思い出話でもして、楽しく笑いたいだけかもしれない。
優しいから、部下の私が仕事をしやすいように、過去の関係なんてもう気にするなって、ただの思い出なんだからって、そう言いたいだけなのかもしれない。
けど、私は……。
一時でも友達以上の関係になった人と普通に話ができるような、器用な人間じゃない。
「惑わせないでって事は、俺にまだ少しは気持ちがあるって事?」
てっきりそのまま引き下がってくれると思ってたのに。
意外な言葉をかけられて、驚きながら顔を上げる。
課長はわずかに笑みを浮かべて私を見ていて、そこにはもう傷ついた跡はなかった。