蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


咄嗟にケータイで連絡を取ろうとしたけど、そのケータイは鞄の中。
鞄はといえば、さっき知美に取られて……。

「え、どうやって帰ればいいの……?」

お見舞いどころか帰る手段さえ見つからなくて、頭の中がパニックになる。
だって、定期だって部屋の鍵だって、お財布だって、全部が鞄の中だ。

どうやったって、ここから動く事ができない。
帰る交通手段も、知美がなんでこんな意地悪するのかも分からな――。

「吉野?」

後ろから声をかけられた事にびっくりしながらも、ゆっくりと振り向く。
だって、このアパートで私の名前を知っているのなんて……きっと課長だけだ。

振り向いた先には、呆れたみたいに笑う課長がいた。
その手には、開いたままのケータイ。



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