君が泣いた夜
君が泣いた夜
「彼女と別れた」
そう言って静かに涙を流す穂月(ほづき)。
「泣かないで」
私はまるで心配しているかの様に、穂月の頬に手を添える。
歓喜で踊る心を隠して。
「好きだったんだ、本当に」
「穂月」
聞きたくない。
穂月に愛されていたくせに、他の男を選んだあの子への気持ちなんて。
「穂月、泣かないで」
他の誰かを思って泣いたりしないで、お願いだから。
穂月の頬に触れている手で、流れる涙を拭ってその目元にキスを一つ落とす。
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