二人の王子と地味な私と

え、あそこって…
聖夜くんが指差したのは倉庫の屋根だった。
私はブンブンと首をふる。
「いやだ!本当に無理!」
「何でだよ。あそこなら見つからねーし、最高だろ?」
「だって…」
「まさか…高い所が苦手、とか?」
う゛…っ!!
確かに図星だった。
だけど目の前で人の事を嘲笑っているやつがいるのにそんな事言えるわけがない。
「だ、大丈夫です…っ!」
「!?」
私は意地を張り、そう答えた。二人はびっくりしていたようだが私は平然とした態度を装って歩く。だが、その決心は目の前に来たところで止まってしまった。
「………」
予想以上に長いはしご。しかしこれを登らなくては上には行けない。
二人は慣れた手つきで登って行く。
「う゛…っ!!」
何とか途中まで登れたのだが、私は下を見てしまい足がすくんで動けなかった。そんなときスッと手が差し出された。
「何………?」
「早くしろよ。」
「手なんか借りないわよ!!」
「面倒なやつだなぁ…」
拓哉くんは私の手をつかんだ。途中までやっとのぼってこれたと言うのに片手が離れては登れない。
だが、私が言葉をだす前に拓哉くんは私を引っ張りあげたのだった。
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