たとえ愛なんてなかったとしても
一つ息を吐いた後に、次は日本語で客席に話しを始める。



「報道で知っている人も多いと思いますが、俺は幼い頃に両親と悲しい別れを経験し、つい最近再会しました。

育ての両親もいたし、最初は何で今さら......と思う気持ちもありました。

今は、うーん......、まだ日本語が完璧じゃないので、上手く言えないけど......」



一人でベラベラと話し続けるのも変なので、客席の反応を見ながら、いったん言葉を切る。

静かに聞いてくれているようだ。

見たくないけど、母の顔も見る振りをする。


どんなのが感動的なのか分からないが、昨日考えてきたことを言おうと言葉を続けた。



「そうだな......、三つ子の魂百までということわざを最近覚えました。
アメリカにも同じ意味のことわざがあります。

幼い時の性質はいくつになっても変わらない。

俺の気持ちを一言で表すと、この言葉です」
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