たとえ愛なんてなかったとしても
ライブが終わり、控え室の片付けをしていたら、マネージャーともう一人の人間が入ってきた。
マネージャーと、そして......。
「コンニチハ、ハジメマシテ!
僕は、エリックの弟のトニーです!」
「......ひさしぶりだな?
何しにきた?
お前もゲストとして呼ばれたのか?
ライブの時間はもう終わったぞ」
俺が家を出て以来だから、五年......六年ぶりだろうか。
片言の日本語と英語を交えながら挨拶した"弟"を一度だけチラッと見てから、後は一度も見ないで中国語で話しかけた。
英語で話そうが、中国語で話そうが、メンバーにも分かるんだけどな。
「ライブを見に来てくれたんだ。
ステージに上がるように言ったんだけど、それはしたくないって言うから......」
俺のあまりの冷たい態度に気の毒に思ったのか、マネージャーはフォローを入れた後に、会議があるから後はよろしくと去っていった。
トニーを置いて。