たとえ愛なんてなかったとしても
「突然会いにきて、ごめんなさい。
事務所の人が僕をライブに招待してくれて、客席で見てたんだ。
今日のライブ、すごくかっこ良かった!

それでここにきたのは、たくさん話したいことがあって......」


「俺には話すことなんてない。
話って、金か?

悪いけど、金ならない。
銭ゲバの親に払う手切れ金で精一杯だ」



あんなミスばかりだったライブのどこが、かっこいいのか。

眉毛を下げて俺を見つめるトニーの顔を極力見ないようにして冷たく言い放つ。



「ライブは終わったんだから、さっさとアメリカに帰れ。
俺は忙しいんだ、これから打ち上げに行かなきゃいけないし」


「あ、のー......、打ち上げなら多少遅れてもなんとかしておきますので、話きいてあげてもいいんじゃないかなー、なんて。
よけいなお世話だと思いますけど......」



余計なことを言い出す俊輔を睨んでから、それもアリかと思い直す。

トニーとはいずれ話をしなきゃならないと思っていた。


それが今日になるか別の日になるか、遅いか早いかの違いで、避けては通れないことだろう。
< 155 / 559 >

この作品をシェア

pagetop