たとえ愛なんてなかったとしても
気分が晴れることはないけど、さすがにそろそろ動き出さないと仕事に遅刻してしまう。


のろのろと準備をして、マネージャーが迎えにくるのを待った。





マネージャーから到着の連絡を受け、駐車場でいつもの車に乗り込むと、こういう時に限ってキャシーが隣になる。


ぎこちなく、おはようと挨拶したら、キャシーはいつものように軽く微笑んで、おはようと言って、すぐに音楽を聴き始めた。


昨日までと、同じ。


態度を変えられても困るけど、全く変わらないというのも、それはそれで悲しいものがある。


キャシーの様子を盗み見ると、柔らかそうなくるくるした茶髪を、真っ白な指先でイジっていた。


キャシーは、髪も体も全てが柔らかそうだ。

実際柔らかかったし。


柔らかそうな髪に俺も触れたくなったけど、そんなことできるわけもなく邪念を振り払う。


気晴らしに音楽でも聴こうと携帯に入れた音楽を流し始めるけど、そこでもまたキャシーはどんな音楽を聴いているのだろうか、と考えてしまう俺は。


やっぱり邪念が振り払えていない。

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