たとえ愛なんてなかったとしても
俊輔さんも帰ると言うので、英俊に見送られて、二人で抜け出す。


宿舎までそこまで距離もないし、タクシーをつかまえるのも時間がかかりそうだったので、歩いて帰ることにした。

外は真っ暗だし大丈夫だと思うけど、一応帽子とメガネで変装して。



「あのー、大丈夫......じゃないよね?」



無言でスタスタ歩いてたら、遠慮がちに声をかけられた。
後ろを歩く俊輔さんを待って、歩幅を合わせる。



「大丈夫じゃないです、大丈夫なわけない」



体だけは大丈夫、フラフラもしてないし、足取りもしっかりしている。

だけど精神面はちっとも大丈夫じゃなかった。



「それより、ごめんなさい。
私のせいでエリックさんと気まずくなりましたよね。

かばわなくて良かったのに。
私がエリックさんを怒らせるようなことばかりするから、ああ言われても、仕方ないんです」



俊輔さんが口を開く前に、先に言葉を続ける。

気持ちは嬉しかったけど、結果的に悪い方向にいってしまった。
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