たとえ愛なんてなかったとしても
「ソロは知ってても、私のことはいつも見てない。

胸ばっかり、見てる。
昨日もね」


「は、な!?
み、みってない!!
何を根拠にそんな......!」



最後の一言は耳元でささやくように言われて、すぐに否定する。


メンバーもいる車の中でこんな話まずい......と思って周りを見るけど。

誰も俺たちの話なんて興味ないようで、寝ていたり、自分の世界に入っていたり。


そもそもメンバーとこんなに話すなんて珍しく、めったにない。


ただ一人、後ろの席の英俊(インジュン)だけ目が合ってウインクされた。


英俊はグループの一番年下の19才で、癖っ毛とまるい目が特徴的。


「インジュンは呼びにくいだろうから、ひでとしでいいよぉー」と日本活動時は、自らひでとしと名乗る少し変わった台湾人だ。


いつもニコニコして、うちのメンバーの中では話しやすいタイプではあるけれど、いまいちつかめないやつだと思う。


とりあえず俺も英俊にウインクを返した後で、またキャシーの方に向き直る。
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