たとえ愛なんてなかったとしても
「日本人ですか?ここの席座ってもいいですか?」


「......へ?」



突然日本語で話しかけられて、ファンの子かと思ったら、俺のことを知っている様子はなく、ただ同じ日本人として声をかけたみたいなので、快く了承した。


24才だという大きなバックパックを背中に背負う真っ黒に日焼けした日本人の男性と、隣にはブロンドのオーストラリア人の彼女。


大学を卒業してすぐにアフリカ大陸横断の旅に出かけ、旅を終えてオーストラリアの牧場で一年間働くもまた旅に出たくなって、今はヨーロッパを旅しているとか。

今回の旅はオーストラリアで知り合った彼女も一緒に。


つまり彼は、バックパック一つ背負って、安宿を転々とする長期旅行者、典型的なバックパッカーみたいだ。


なんかすごい人だな......。



「急に声かけてごめんなさい。
旅先で日本人を見つけたのが嬉しくて、話したくなって」


「あー、分かります!長い間話してないと、日本語忘れそうですよね」



俺なんて少し中国にいただけでも、日本に帰ってから日本人にうっかり中国語で話しかける時あるし。

何年も離れてたら、もっとだろうなあ。
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