たとえ愛なんてなかったとしても
「そうですか......、勇気ありますよね。
なかなか人とは違った生き方ってしにくい社会じゃないですか」


「うん、そうだね。
人とは違った生き方をしにくい社会だから、そう生きられない、もちろんそれもあるけど、二番目だよ。

一番は、自分のせい。
他人の視線を気にして動けない自分のせいで、好きに生きられない。

縛りつけられてるわけじゃないんだから、全て社会のせいじゃないよ」



自分の、せい。
精神的には縛りつけられていても、物理的には縛りつけられてるわけじゃない。



「ああ、でも、俺みたいな生き方はおすすめはしないよ。

世間からあまり逸脱し過ぎない方が、生き易いことは事実だ。

こういう人もいるんだな、ぐらいに思っておいて」



彼の言葉に俺が考えこんでいると、彼は苦笑いしてそう付け加えた。

俺も芸能界という普通とは言えない世界にいるから何とも言えないけど......。


色々な人がいるんだな。
外国人と接してカルチャーショックを受けることも多いけど、同じ日本人でも色々な人が。


何が良いのか悪いのか分からないけど、勇気がもらえた気がする。

少しだけ、自分のやりたいことをやる勇気が。


全て自由には生きられないけど、ほんのすこしだけ逸脱する楽しみを見つけたい。





「ありがとうございました。
俺も楽しかったです」



それから少し話した後、彼らに別れを告げて、日本料理Chinaを後にした。



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