たとえ愛なんてなかったとしても
あまり騒がしくすると、隣の部屋の人に迷惑がかかるからと、いつもより控えめな声量で歌い始めるキャシー。


洋楽のバラードをすごく優しくて、安心できる声で。


ああ、リラックスできる......。



「......俊輔?」



やばい、ほんの少しの間だと思うけど、キャシーに声かけられるまで、座ったまま意識がなかった。

歌わせといて、なんて失礼なやつなんだ。

これじゃまた、機嫌を損ねてしまう。



「ごめん!つまらなかったとかじゃなくて、なんか安心できる声だったっていうか、なんていうか......」


「いいよ、分かってる。
眠いならシャワー浴びて、もう寝たら?」



慌てて謝ったけど、キャシーは穏やかな顔で微笑んでいた。

それを見たら、急に愛しくなって、なんだか胸がいっぱいになった。


俺は、キャシーが好きだ。


他人からしたら十人中九人が反対するような自由奔放な子でも。

未来なんかなくても、叶うことがなくても。


キャシーが......好きなんだよ。
< 252 / 559 >

この作品をシェア

pagetop