たとえ愛なんてなかったとしても
さすがに俺の真剣さが伝わったのか、目を丸くするキャシー。

そして、横においてあったくまを抱きしめて、困ったような顔をした。

眉を下げて、八の字にして。


上海の時に見た顔と同じだ。
あのとき初めて見た、表情。



「本当は、俺の気持ち気づいてただろ?」


「もしかしたらそうかなとは思ったけど、そうじゃなければいいなと思ってた......」


「なんで?迷惑?」


「迷惑じゃないけど......困る。
今まで通りが気楽で良かったのに。

俊輔には、俊輔のことだけを見てくれて、優しい女の子が合ってるよ」



自分はそうじゃないからなんて、そんな言葉は聞きたくなんてなかった。

けれど、そう言われてしまうと何も言えなかった。


受け入れられるとも思っていなかったし、キャシーの性格も知っていたから。

それでも実際に言葉にして言われると、キツいものがある。

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