たとえ愛なんてなかったとしても
ため息をつきながら、ようやくたどりついた赤いスカートのマークのついたドアに手を伸ばす。


そのドアを開ける前に後ろから強い力で、腕をひっぱられた。


今日は何なの?
さっきから邪魔ばかり入る。


いら立ちながら振り向くと。



「......村上さん。なんですか」



私と同世代の俳優で、うちの事務所の重役の息子。

ほとんど返信していないにも関わらず、しつこくメールや電話をかけてくる人。

世間的にはかっこいいのかもしれないけど、はっきり言って嫌いな系統の外見で生理的に受け付けない。



「何度もメールも電話したんだけどな。
気がつかなかった?」


「気がつきませんでした」



冷たい声であなたには興味ありませんというオーラを出しているのにも関わらず、村上は私を壁に追い詰めて腕をついて閉じ込める。


他の男ならひっぱたいてやるところだけど、曲がりなりにも重役の息子。

これからも事務所にいたいのなら、あまり無下にもできない。


「ふーん。まあ、いいや。
終わったら二人でゆっくりできるとこに行かない?」


「すみません、疲れてるので」



はっきり断ってるのに、ネットリとした手つきで体をなで回される。
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