たとえ愛なんてなかったとしても
「やめてください!うちのメンバーに何するんですか」



トイレの前で攻防を繰り広げていると、村上を押し退けてぐっと引き寄せられた。

......俊輔に。


村上は何も言わず、舌打ちをして去っていった。



「......大丈夫?」


「大丈夫、だけど、なんで?
まさか待ち伏せしてたの?」



すぐに俊輔の腕の中からすり抜けて、村上に触られて乱れたワンピースを整える。



「な、違うって!待ち伏せじゃなくて。
廊下で放心してたら、キャシーの後に会った村上さんもいつまでも戻ってこないから!
なにかもめてるのかなって......」


「そう。それにしても、あんな言い方して逆恨みされたらどうするの?
あいつは重役の息子なんだから」


「だからって、好きな人を放っておけないだろ。
それに、嫌がってる女に無理矢理なんて男として許されない」



そう言われて嬉しいような、困るような複雑な気持ちになる。

なんでそんなに私のことを......。
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