たとえ愛なんてなかったとしても
「ねえミヒ、覚えておいて。

私ね、欲しいものはどんな手段をつかっても手に入れないと気がすまないの。

たとえあなたが相手でも遠慮する気はないわ」



奪ってあげる。

あなたには渡さないわ。
化粧品のCMも、
俊輔も。
......エリックもね。



「おい......!」


「なに?CMの話だけど?
私何かおかしいこと言った?」


「え、いや......言ってないよなぁ?」



俊輔の方を見てにっこりと笑えば、ミヒの手前それ以上何も言えないようで、言葉を濁す。

この調子じゃ、ミヒとエリックが密室で何していたのかも聞けてないわね。


一人で居心地の悪そうにしている俊輔は無視して、ミヒと視線を合わせる。



「わざわざ言われなくても、私もそのつもりよ。遠慮なんてされたら、逆に気持ち悪い」



一瞬きょとんとした後に、すぐにいたずらっぽく笑うミヒ。
良い度胸じゃない。


俊輔は知らないでしょう?

私なんかよりもよっぽど、ミヒの方がしたたかな女よ。

もしかしたらミヒ自身も気づいてないかもしれないけど、ね。


断言してもいい。俊輔と付き合っていても、エリックから口説かれたら、ミヒは簡単にそっちになびくわ。

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