たとえ愛なんてなかったとしても
期待しながら待っていたら、次に続くのは予想していた二つのパターンのどちらとも違う言葉だった。



「炎彬さんも、特殊な趣味ありますよね?」


「は......?ああ、いや、あれは誤解で。
ほら、週刊誌ってよくガセネタばっかり流すから」


「でも、炎彬さんと同じ事務所の子にも聞いたんです。炎彬さんが、キャシーちゃんに迫ってたって」
 


ああ、こんなところまで噂が広がってしまっている。

週刊誌のことは同業者ならよく分かっているだろうし、簡単に否定できても、俺の口から出たこととなると話は別だ。



「あれは迫ってたわけじゃないんだ。
それに俺はキャシーには興味ない」


「隠さなくても大丈夫ですよ。

実は私も......炎彬さんと同じ趣味があるんです。だから炎彬さんとお話してみたくって、マネージャーにお願いしたんです。

こういう仕事してると、相手を探すのも大変ですよね。
ネットで探すっていうわけにもいかないですもんね」



え......。俺を指命した理由ってそんなことか!
しかし何と言ったらいいものか。

好奇心だけのやつならかわせても、俺をいわゆるお仲間だと思っているレイナにはうかつなことを言うと傷つけてしまいそうだ。


俺自身に興味があったわけではないという衝撃の事実にがっかりしながらも、言葉を探す。

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