たとえ愛なんてなかったとしても
レイナの真っ白な小さな手にはふさわしくないものをさっと取り上げ、彼女のカバンに押し込む。

そして、大きく息を吸い込んで。



「なに考えてるんだ!
こんなもの持ち歩くバカがどこにいる!?
家に置いてこいよ!

どこで誰が見てるか、聞いてるか分からないんだ!抜き打ちカバンチェック、なんてあったらどうする? 
俺はまだしも、清純派歌手のレイナは一気にイメージダウンだろ!?

プロなんだから、それくらい気をつけろよ!」



ほとんど息継ぎもしないで、日本語でしっかり言い切った俺はさすがに肺活量がすごいと、自画自賛しながらも。 

初対面の相手に怒鳴りつけるのはまずかったかと、レイナの顔を盗み見る。


マネージャーから、お願いだからいつものようにお金の話をしたり、いきなり大声を出さないでと、昨日の夜ネチネチと言われたばかりなのに。

やってしまった。


というか、それよりも重大な問題があるような気がしなくもないが。
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