たとえ愛なんてなかったとしても
「次のイベント、分かってるよね。
炎彬が抜けるから、エリックが代わりにメインに入って」


「はい、分かってます」 
 


自分にとっては納得のいかない収録が終わり、迎えの車までを早足で移動中にマネージャーに念を押された。  


テレビの収録を終わらせて、北京で新曲のPRイベント。それが終わったら、雑誌の取材を二つ受けて、最終便で東京に帰る。

明日からも、秒刻みのスケジュール。 


グループで活動していると、幅広いファンがついたりとメリットも大きいが、個人で活動するよりも拘束される時間が長いし、制約も大きい。


いくら自分は上手くやっていても、一人がしくじれば何度もリテイクをくらう。

誰か一人が別の仕事で抜ければ、ダンスのフォーメーションも変えて、歌のパートも誰かが代わりに歌わなければならない。

前もって分かっていればまだ良いが、本番直前に急遽、なんてこともある。


秒刻みのスケジュールに、言われたことをこなす。体は一つだというのに、それ以上の働きをしなければいけない。


そうだ、だからいつまでも一つのことをひきずっているわけにもいかないし、余計なことを考えている暇なんてない。

余計なことを考えている暇なんて、一秒だって.......。
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