たとえ愛なんてなかったとしても
「おつかれさまです。
少しだけ時間いいですか?」



俺を悩ませる余計なことの一つの原因である弟のトニーが、駐車場の入り口で俺を待っていたのか遠慮がちにこちらを見る。



「あまり時間がないから、早めに終わらせてね」



時間はないと口を開くより前に、マネージャーが余計な気を回し、俺を置いて、炎彬以外の他のメンバーがすでに乗り込んでいる車に向かっていた。

取り残された俺は、トニーと二人で気まずい雰囲気で向かい合う。


 
「忙しいのにごめんね。
今日の収録の時に、兄さんが言ってくれたこと、すごく嬉しかった。
 
僕も兄さんと一緒に番組に出演できるなんて、夢みたいで......」



そんなこと言うために、わざわざ待ってたのか。トニーにはキツイことを散々言ったのに。

どこまで、こいつは.......。
  

あんなの本気にするなよ。
テレビ用の営業トークで本心じゃない。

俺は利用できるものなら何でも利用するだけで、お前に愛情があるわけじゃないんだ。

そうだ、俺に愛情なんて、あるわけがない......。



 
< 417 / 559 >

この作品をシェア

pagetop