たとえ愛なんてなかったとしても
「えー! ご飯食べる時間もないんですかあ?」


「どうしても外せない仕事で、すぐに行かなきゃいけないんだ。

この埋め合わせは必ずするから。
寿司でも、うなぎでも好きなものおごるよ」


「きゃあー! 約束ですよ?
マリマリ、期待してまってまぁす。
お仕事がんばってくださぁい」



語尾にハートマークがつきそうなほどの猫なで声と、ぶりぶりした仕草に思わず鳥肌が立ちそうになった。


なんで俺はこの女を誘ったんだったか......。


可愛げがあるところがいいと思ったけれど、ぶりっこもやりすぎるとイラッとくるものがあるな。


まあとにかく、また次回誘わなければいけない。

このままでは面子が立たないから。


店で待ち合わせたので、そのままそこで別れた後に、自分の車で仕事にいくわけでもなく家に帰る。


頼めば金くらい貸してくれたかもしれないが。


財布は高級ブランドなのに、千円しか入ってないなんて!

人気グループのメンバーで、おまけに高身長でイケメンの俺が、千円しか持ってないなんて!


そんなこと言えるわけがない!!
< 42 / 559 >

この作品をシェア

pagetop