たとえ愛なんてなかったとしても
殴ってもいいと言った直後に、胸に強烈な衝撃を感じた。

一瞬息ができなかったよ......。
さらに拳を振り上げるキャシーに身の危険を感じ、両腕を前に出す。



「ちょ、ちょっと待って!

殴ってもいいとは言ったけど、あれはちょっとかっこつけたって言うか......。
まさか本気で殴ってくるとは思わなかったと言うか......。

一応言っておくけど、殴られるのが好きとかじゃないからな!?

せめて殴るなら、収録終わってからにして!
本番前に再起本能になるから!
キャシー聞いてる!?」



反応のないキャシーに必死で言い訳する俺、カッコワルイ。

廊下で殴られているところなんて誰かに見られたら、下手したらキスしてるよりも大問題だ。

それ以前に痛いし。


必死の嘆願むなしく、キャシーの手はこちらに素早く振り上げられて、衝撃を覚悟して身構えたけど。

思っていた衝撃はなく、キャシーの手はただ力なく、ぺたっと俺の胸につけられた。

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