たとえ愛なんてなかったとしても
それを全て無視しても、凝りもしないでしゃべり続けているヒョンスを見ていると、どこまで人が良いんだと、胸にモヤモヤしたものがこみ上げてくる。

どうして、いつも素直で、純粋でいられるんだ。まるで人の悪意なんて気づいてないかのように.......。


こいつを見てると、ずっと目を背け続けていた、俺の中の存在しないはずの純粋な心を見ているようだ。

誰かを信じる心なんて、俺の中にあるはずがないのに。



「......エリック?どうしたの?
やっぱり体調悪い?」



一言もしゃべらない俺をさすがに不審に思ったのか、俺の顔を覗きこみ、肩に触れたヒョンスの手をすばやく振り払う。

ああ、もう、どうして、こいつといると、こんなにもイライラするんだ。

どうして、感情を抑えることができなくなるんだ。



「なぁ、どうしてそんなに優しいんだ。
どうして誰にでも優しくいられるんだよ」


「誰にでも優しいわけじゃないよ。
自分の目に届く人にだけ。

エリックは友達だし、それにほら前も言ったけど、俺と似てるから放っておけないんだよ」



うつむき、声を押し殺し、やつの質問には答えず。

俺が何の脈絡もなく、態度を変えたことには触れることはなく、ヒョンスはただ穏やかに受け答える。

それが、その態度が、どこまでも俺を苛立たせることを、きっとこいつは分かっていないだろう。

急に態度を変えたり、冷たくする俺を訳の分からないやつだと、突き放してくれたのなら、こんなにもみじめな気持ちにならずにすんだのに。







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