たとえ愛なんてなかったとしても
「ごめんごめん。だってさ、俺も同じようなこと思ってたよ。

そう考えた理由はエリックとは違うけど、自分一人で何もかもやった方がいいんだって。

でもさ......」



そこで一端言葉を切って、緩んだ顔を少し引き締めてから、やつは話を続けた。



「違うんだよ。
自分一人で全てをやる方が気楽に思えるかもしれないけど、全然楽じゃない。

その時は良くても、絶対に後から無理がくるよ。少なくとも俺は......、そうだった。

確かにひどい人間もたくさんいるけど、それでも誰かと助け合わないと、一人では生きていけないよ」



ゆっくりと言葉を選ぶように話すヒョンスの話に、黙って耳を傾ける。

一人では生きていけない、か......。
どこまでもこいつらしい考え方だ。



「エリックにも同じ目標を持つ仲間がいるよね?俺もそうだし、相反合のメンバーだってそうだよ。みんな助けたいと思ってる。

お願いだから、何もかも一人でやろうとしないで、頼ってよ」



助けたいと思ってる?どうして、うちのメンバーのことがお前に分かる?

一人では生きていけないから、仲間と助けあえって?こんな汚い世界でも、心から信じあえる仲間がいるはず?

青春ドラマの世界かよ。


......理想論だ。
ドラマや、事務所のキャラ作りの設定ならともかく、心から信頼できる人なんて、現実にはいない。

口ではどれだけ大切だと言っても、最終的には誰だって自分が一番可愛いだろ?


騙されるくらいなら、裏切られるくらいなら、一人で生きていく方が楽だ。
他人は利用するだけ、メリットのある人間と一緒にいるだけでいい。

そのはずなのに。そう思っているのに。
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