たとえ愛なんてなかったとしても
泣かせてしまう俺の方にも、何か落ち度があったのだろうか。

考えても分からないので、冷たい床にぺたんと座り込んだミヒの隣に腰を下ろす。



「やめるのは勝手だけど、やめてどうするんだよ。ここ以外の場所で生きていけるのか?」


「分からない、ここにいるのも辛い、けど、
ここ以外じゃ、きっと生きていけない。

ステージで光を浴びて、あの場所に立つ時が一番生きてると実感できるの。
私はいらない人間なんかじゃない、必要とされてるんだって......。

私はきっと、誰かに注目されてないと生きていけない人間なんです」

 
「そうだろうな。  
俺も、同じだ」



マスコミに追いかけ回されるのはウンザリだ。
ストーカーのように粘着してくる一部のファンやアンチもウザい。

歌うことが好きなだけなら、一人だって歌えるし、誰かに聞いてほしければカラオケにでもいけばいい。

仕事だって、簡単にとはいかないにしろ、探せば何かしらはあるだろう。


けれど結局は、俺は、俺たちは、ここから離れることができないんだ。

他の何にも変えがたい魅力を持つ、あのステージから。


ファンが待っているから?
注目されたいから?
金がほしいから?
  

きっと全部なんだろう。
自分の愛されなかった孤独を埋めたい、認めてほしいという、自分のつまらないプライドや、純粋な気持ちも含めて、全部。


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