たとえ愛なんてなかったとしても
「ミヒには許してもらえなくても仕方がないと思ってる。

でも、あなたはお母さんの誇りだった。
あんなに小さかった子が、こんなにも綺麗になってテレビに出て活躍して、それを見ることだけが生きる楽しみだったのよ」



居眠り運転して事故に遭ってしまうくらいに毎日疲れていても、そのおかげで今まで生きてこれた、と涙ながらに彼女は話す。


誇りも何も、生んだだけで育てもしなかったくせに。

私は整形して、あなたよりもずっと綺麗になったの。あなたの娘としてなんかじゃなくて、私として、私は成功したの。

誇りなんて、思ってほしくもない。
そう思っているはずなのに。


ろくに返事も返さない私にいつも、新曲の感想や忙しくなれば心配して手紙を書いてくれたことを思えば、胸が締め付けられるようだった。

  

「意識がない間ね、暗いトンネルを歩いていたのよ。その先にはまぶしい光があって、そこにたどり着いていたら、きっと私は死んでいたと思う。

でもね、あなたのことを思い出して、戻りたいって強く思ったら、神様がもう一度チャンスを与えてくれたの。
きっとやり残したことがあるまでは、死ねないのね。

お母さんに会いにきてくれてありがとう。
これでもう思い残すことはないわ」
< 528 / 559 >

この作品をシェア

pagetop