たとえ愛なんてなかったとしても
「退院したら、日本で一緒に暮らそう。

これからだって私、自慢の娘でいられるように努力するから......。
だから早く元気になって、ライブも見にきてね。約束だよ、お母さん。

お母さん、お母さん、ねぇっ......!」



涙ながらに頷くお母さんの体に、子供のように泣きながらしがみつく。

何を言おう、どんな話をしようと考えても、作った言葉なんてまるで必要なかったみたいで、自然と言葉が口から出てきた。


自分でも自分の本心なんてよく分かっていなかっただけで、ううん気づかない振りしていただけで。

本当は私、いつも手紙を送ってくれるお母さんに会ってみたかったんだ。

許せないと言いながらも、心のどこかでは会いたかったんだよ。


今だって許したわけじゃないけど、許せないけど、それでも私はこの人ともっと一緒に過ごしたい。

私のたった一人のお母さんと。




それから今までの時間を取り戻すかのように、少しの時間でたくさんの話をした。


まだまだ話したりなかったけど、あまり体に負担をかけてはいけないし、飛行機の時間もあるので、そっと病室を後にする。

またね、......と。










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