きのこのうら

私は、きのこの裏側が大嫌いだ。ほとんど憎んでいると言ってもいい。

あの、カサの裏の、スジみたいなやつががびっしり詰まっているのを見るとそれだけで眩暈がする。投げ飛ばしたくなる。跡形もなく刻みたくなる。ハンマーで潰したくなる。

ああ、どうしてあんなに気持ち悪いんだろう。思い出すだけで鳥肌が立つ。


目の前で椎茸の塩焼きをおいしそうに頬張るエミを、私は苦虫でも噛み潰したような顔で見つめていた。
わざわざお金まで払ってきのこを食べるなんて、意味がわからない。


「んん、おいしい」

エミは幸せそうにビールジョッキを傾けた。

私は当然椎茸なんて食べられるはずもなく、愛想のないアルバイトくんが長方形の洒落たお皿に乗せられた椎茸を持ってきた瞬間、バッと音が立つくらい勢いよくお皿から顔を背け、テーブルの上に置かれたヤツを見ないために、テーブルの端に立てられていたドリンクメニューを持ってきて、私と椎茸を遮断した。

どうしてそこまでするのかって、だって、椎茸の塩焼きって、まさしく私が大嫌いなひだの方を上にして盛り付けてあるんだもの。それが四つも並べられた様なんて想像したくもない。あの気持ち悪いひだがいっぱい、いっぱい……ああ、キモチワルイ……。