きのこのうら
「だって、見ちゃうんだもん。嫌いだけど、なんか、見たくなっちゃって、そんで、気持ち悪くて、食べらんないの」
そう、私は、どうしても見てしまうのだ。鳥肌が立つほど嫌いなのに、どうしても気になってしまって、見たくなる。そして見ると、どうしようもなく気持ち悪くて、結局、私はきのこを食べることができない。
「怖いもの見たさってやつ?」
呆れたようにエミが言う。それから何気なく椎茸を口に放り込んだ。エミの口に入る瞬間、一瞬だけ見えた椎茸に顔の筋肉が強張った。それをかき消すように頭を振って、私は再びビールを仰いだ。
「わかんないけど、そんなようなもんかも」
ビールジョッキを置いて情けなく呟いた。
怖いもの見たさ。そうなのかもしれない。私は確かに、きのこのうらには恐怖すら抱いている。どうしてきのこごときに恐怖を覚えなくてはいけないのか。あんな菌類……!
「まあ確かによく見ればちょっと気持ち悪いけどさ。このひだだってちゃんと役割があって付いてるんでしょ?」
ドリンクメニューで隠れて見えないところを、エミが箸でつついている。おそらく、椎茸の裏側を見ながら言っているのだろうが、私はもうその場面を想像しただけで鳥肌を立てていた。奥歯を噛み締める。