スーズ
それから取材を由里は進めた。
カメラマンが写真を撮りながら、取材をしていく。
最初はよくある質問ばかりした。将来の夢だとか、トランペットを始めたきっかけとか。
よくある質問だからよくある答えでいいのに、夏樹は癖を入れてくる。
屁理屈っぷりに呆れながらも、質問を続ける。しかし、笑ってくれないからカメラマンも困っていた。
こんなやりにくい取材なんて初めてだ。とんだ仕事を任されたものだ。あとで部長に一つくらい文句を言ってやろう。
由里のイライラは募るばかりで、メモを取る字もだんだん雑になっていく。
「では、何故短調の曲ばかり吹くんですか?」
「……は?」
「コンクールでも演奏会でも短調の曲ばかりですよね。好きなんですか?」
「ああ、そう。好きなの。」
「でもコンクールでは長調で華やかに終わる方が印象も良いしトランペットらしさというのがでるのでは?」
「…別に答える必要なくない?」
「はい?」