スーズ
「黙秘権を行使する。」
……取り調べじゃないんだから。
「……では、海外に留学する予定は?」
「ない。」
「行きたいと思わないんですか?」
「それって水崎ちゃんに失礼じゃない?」
質問に質問で返される。ああ、なんか会話が噛み合わない。
こんなにも閉ざしてる人も珍しい。
「俺は水崎ちゃんの指導で充分だから」
「それだけ先生を尊敬して信頼しているということですか?」
「いいや、俺の実力」
何が言いたいのか、サッパリだ。さっきは水崎さんを頼ってるように話してたくせに。
「では取材はこのへんで。最後に笑った写真を撮りたいのですが。」
「笑う必要ないよね?」
椅子から立ち上がった由里を挑発的に見上げてくる。由里には全く意図がわからなかった。
「何故、です?」
「短調ばかりのトランペッターですから。」
パシャっとシャッター音が室内に響く。
初めて見せた笑顔は鋭い視線で挑発的だった。