スーズ
「あのね……」
「邪魔って言ってんの、わかんないかな~」
「………。」
夏樹は右足に重心を傾け、譜面をパラパラと捲る。
全面防音された壁に囲まれた室内。今度開催される構内音楽祭のポスター。蛍光灯の光を反射してるグランドピアノは、大黒柱のような存在感がある。
洗礼された室内にいるイケメンから発された言葉は、下品で陳腐だ。
「…でも、電話して了承してくれましたよね?」
「ああ、あのオヤジがかってにね」
「はあ…、今日取材があることはご存知ですよね?」
「知ってるよ?でも、邪魔なものは邪魔だから」
「……黙って聞いてりゃあ、」
由里の声を遮るように、大きな音を上げてドアが開いた。
「いや~、どうもすみませんね。遅くなりまして。私、神谷くんの指導してます水崎浩二です。」
中肉中背の水崎と名乗るおじさんは、由里に名刺を渡した。それに慌てて由里も名刺を渡す。
「編集部の七瀬由里です。本日はどうもありがとうございます。」