スーズ
「いえ、こちらこそ。雑誌に特集して貰うことは一番の売名ですからね。神谷くんの写真もですが、是非校舎の写真も撮ってください」
「はい。そうさせて頂きます。」
「では、早速取材しますか。神谷くんは少し屁理屈ですが、演奏は素晴らしいので」
「はい、そのようで。」
少し屁理屈ではなく、とても屁理屈で我が儘な学生さんで。
由里の本音は心の中にしまい、営業スマイルで乗り切る。
「ほら、神谷くんそんなブスッとしないで。」
「練習したいし」
「いいから、座れ!」
グレーのスーツにストライプのシャツを着た、ダンディな格好の水崎からは想像もつかないような低い声に驚く。
その威圧が効いたのか、夏樹は大人しく座る。
ただの中年男だと思ったが、ただ者では無いかもしれない。由里はそう思った。
「じゃあ、始めましょう。」
由里を見た水崎の笑顔に、頷くことしかできなかった。