きみくじ当てます


「さすが色男は違うねぇ。この前の子はどうした、この前の子は?」


「…この前の子?」


オッサンの言葉に河野が俺を見上げてきた。


「あ、ああ~、あ」


俺が言葉を濁すと、オッサンが河野のほうに身を乗り出した。


「ちっこくて可愛いらしい子だよ。ぼうずがな、ポーチを当ててやったんだ」


「ポーチ?…ああ、柊さん?」


「……まあ」


くっそ、

ペラペラペラペラ喋りやがって。


いい加減口を閉じやがれ。


「もういい、河野、ほら行くぞ」


「え、いいの?知り合いでしょ?」


「いいんだって」


「待ちな遼ちゃん」


河野の背中を押して早いとこ逃げようとすると、オッサンが俺の襟首を掴んで引き止めた。


うぜえぇ


煩わしいという感情を隠さずに振り返ると、オッサンはニカッと笑った。


「見誤るんじゃないよ。本当のことは、しっかり目を見据えてりゃ見えてくるもんなんだ」


「は?」


意味のわからないことを言って、ちらり、と河野を横目で見てから俺を解放した。





「大切なものは何か、よく理解しておくんだぞ」








< 113 / 148 >

この作品をシェア

pagetop