きみくじ当てます
「はっ!そうだ時間!」
山崎がガバッと立ち上がり、柊の手も引いて急いで立たせた。
ボタンはきっちりとめてあって、心底ほっとした。
というのは嘘で少し残念。
当たり前だろ。
男だから。
「もう着替えないと!間に合わなくなっちゃう!」
「わわ、待って山崎さん!」
山崎が柊の手をしっかり掴んだまま走りだしたせいで、柊はつんのめりそうになりながら走るはめになった。
山崎のヤロー。
少しは人のことを考えろ。
やれやれと首を振りながらも、真宏に促されて倉庫を出た。
俺が壊したせいで鍵が締まらなくなった重い扉を閉じたところで、そういえば、と辺りを見回した。
「どしたの遼平」
「いや…、」
いくら見回しても見当たらない姿に、俺は首を傾げた。
「ここには河野と来たんだけど、いねぇな。もう戻ってんのか?」
「…河野さん、ねぇ」
真宏はわけのわからない笑みを浮かべたあと、首を横に振った。
「俺たちが来たときにはもういなかったよ。ほら、教室に戻ろう」