きみくじ当てます


【優那】


昨夜、九条くんからかわりに行ってくれコールを受けて、今日かわりに来たわけなんだけど……


早速失敗しちゃったかも。


わたしの携帯を取り上げて、むっとした顔で見下ろしてくる久賀くんを不安混じりに見上げた。

遅刻もしちゃったわけだし、怒ってるのかな……


泣きたくなるような気持ちをごまかすように、わたしはガラスの奥を指差して、だって、と言った。


「あまりにも可愛すぎて引き寄せられちゃったの」


久賀くんは眉を寄せてわたしの指差したほうを確認した。

そしてすぐにその表情が変化したことにわたしは気づいた。



「マジだやべー、可愛いーな」


久賀くんも子犬たちの可愛い引力に引き寄せられてガラスに張り付いてしまった。


「ねー。引き寄せられちゃうでしょ」


「悔しいけど、これは逃れられない誘惑だな」


なんて言いながら子犬を眺める久賀くんの姿が可愛くて、くすくす笑った。



……よかった。

もう怒ってないみたい。


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