きみくじ当てます
振り返ると思った通り河野さんがいて、にこにことわたしに近づいてきた。
「柊さん、今から帰り?今日練習ないのに」
「うん、ちょっと先生に手伝い頼まれちゃって。遅くなったの」
「へー」
河野さんはわたしのクラスとは反対側の靴箱からローファーを取り出し、華奢な足をそれに差し入れた。
わたしもそれに続く。
トントン、とつま先を鳴らしながら河野さんはにこっと笑った。
「久賀くんと帰らないんだね」
―――えっ
わたしは一瞬固まってしまったものの、急いで笑顔を作って頷いた。
「うん。いつも一緒に帰ってるわけじゃないし」
「そうなの?まー、それもそうだよね。理由があれじゃあねー」
理由……?
「久賀くんってくじ運ものすごくいいんだって。柊さんも知ってるよね?」
河野さんに首を傾げられて、わたしはただ首をふるふると横に振った。