Daddy Long ....
1.親子
『灯里(あかり)、良い子にしてたらきっと神様は見ていてくれるから』
そう言って私の頭に置かれた手はとても温かった。
ゆっくりと顔を上げると、母が優しく私を見つめていた。
『おかあさ…』
私の声が母に届くことはなく、そのまま視界は暗転する。
「お母さんっ!」
叫びながら腕を天井に向かって伸ばしていた。
気がつくとそこは見慣れた景色で、自分が夢を見ていたのだと理解するのに少し時間がかかった。
布団から這い出て大きく深呼吸する。
心臓がどくどくと脈打って、自分が酷く汗を掻いていることに気がついた。
久しぶりに見た、お母さんの夢。
母は私が4歳の時に病気で亡くなった。
もともと体の弱い人だったけど、私と沢山遊ぶ時間を作ってくれて、私はそんな母が大好きだった。
最初は母の死を受け入れられなかったけれど、年を重ねるごとに寂しさや悲しみも薄れていった。
父は男手ひとつで私を一生懸命育てきてくれた。
母が居なくなってからは、少しでも父の力になれたらと積極的に家事を行っていった。
親子二人で手探りながらも懸命に暮らしていた。
初めの頃は父も笑顔を見せてくれていたけど、いつからかそれも少なくなっていた。