Daddy Long ....
怖い…
怖い…
怖いよ
お父さん、帰ってきて!
普段あれだけ恐れていた父に早く帰ってきてほしいと思う。
それほど今の私に余裕はなかった。
そのまま動けないでじっとしていると、ドアノブの動きは少なくなり、今度はドアがコンコンと叩かれ始めた。
私はそれには答えず、ただドアを見つめるだけだった。
それでもドアの向こうの人物はインターホンを鳴らすことはしない。
やがて、女の人の声がわずかに聞こえてきた。
「もうっ、いい加減にしなさいよ。そこにいるんでしょ?早く開けなさいっ!」
出来るだけ声を出したくないのか、声を抑えてはいるものの力が入っているようだった。
「だ、誰ですか!?何なんですか!?」
相手が女の人とわかって、少し落ち着いたけどそれでも警戒は解かない。
私が訪ねても、女の人はあとで話すから早く出てきなさいと怒った様子でまたドアノブを廻し始めた。
「あなたが誰か教えてくれない限り、絶対ここは開けません!」
私がそう言うと、女の人は少し黙った。
諦めたのか、わかったわよと言うと簡単に事情を話し始めた。
「あなたの父親が、とんでもないことしてくれたから、これから起こる事態に備えておくのよ!」
「父が…?あの、父をご存じなんですか」
「ご存じも何も、あたしはあいつの姉貴だよ!いいからさっさとここを開けなさい!」
いい加減にしろと言いたげな口調で、女の人はそう言った。
父に兄弟が居ることなんて一度も聞いたことがないけれど、彼女の言い方からすると嘘をついているようには思えない。
私は決心してゆっくりと鍵を開けた。
カチャリ…
バン!!
鍵があけた途端、勢いよくドアが開いた。