Daddy Long ....
私は未だに事情が飲み込めずしばらくそこに立ち尽くしていた。
美和子さんが言っていた。お父さんが大変なことをしてしまったって。
いったい何をしたんだろう。
良くない考えが浮かぶ。
普段から家では私に理不尽な暴力を行っていた人だ。
外で何か問題を起こすかもなんて、前から想像はしていた。
傷害事件でも起こして、警察に連れてかれちゃったりとか…。それならばさっき私が警察に電話すると言った時の美和子さんの言葉も分かる気がする。
もしも父が刑務所に入れられたりしたら、家には私一人になってしまう。
まだ小学生の子供を一人で住まわせるのは世間的に良くない。
だから今まで顔も存在も知らなかった親戚が私を引き取りに来たのかもしれない。
そう考えたらだいぶ納得がいく。
あまりにも急すぎる気がするけど。
考えるのはもうやめた。
父から解放されることには変わりない。
あの暴力から逃れられるのなら、父の顔色をうかがっておびえて暮らす苦痛な日々から逃れられるのなら、それでいい。
私は部屋を見渡した。
たかだか6畳ほどの部屋に使われていないであろう荷物が乱雑に置かれていた。
足を置けるスペースはわずかに一畳ほど。
「まずはこの部屋を片付けなきゃ。横にもなれない」