Daddy Long ....
自分の足元を見ていると、ふと地面が暗くなった。
何事かと思い顔を上げると、知らないおじさんが立っていた。
白いよれよれのシャツに、スーツのような服を着ていた。
ネクタイはしておらず髪の毛が少しくしゃくしゃ、眼の下にはすごい黒いクマが出来ていて無精ひげが伸びていた。
どこか生気のない顔をして、私を見下ろしていた。
「お嬢ちゃん。となり、座ってもいいかな」
おじさんは低い声でそういった。
周りには他にあいているベンチもあったけど、おじさんはどうしてだか私の座っているベンチに座ろうとしてきた。
私は黙ってうなずくと、おじさんはありがとうと言って静かに隣に腰掛けた。
サラリーマンの人かな?
でもネクタイしていないし、身だしなみもきちんとしてない。
こんな時間に公園にいるし、働いてないのかな。
おじさんを横目で見ると、おじさんはどこか遠くを見ていた。
視線の先をたどると、ベビーカーを押して歩く女の人がいた。
それを見て、私はたまらず視線をそらした。
父はまだ生まれて間もない赤ちゃんと、その母親を殺した。
それを考えると辛くて辛くて見ていられなかった。
もう一度おじさんを見ると、おじさんは静かに泣いていた。